「103万円の壁撤廃」!?暮らしへの影響は?

マネー&ライフ

衆議院選挙で躍進した国民民主党が政策に掲げている「103万円の壁撤廃」。
親の扶養に入っていた時に「年間収入103円は超えたら税金がかかる」と遠い昔を思いだしました。

ただ、「103万円の壁撤廃」だけだとアルバイト・パートの方の収入が増えるだけで、
なぜ全国民の所得が増えるのかよくわからないと思われる方もいると思います。

本記事では、年収の壁の概要と制度改正された場合の影響を解説します!

年収の壁

年収の壁とは、年収が一定額を超えると税金や社会保険料が発生する基準です。
そして、年収の壁は税法上の壁と社会保険上の壁の2種類あります。

税法上の壁

税法上の壁で一番有名なのが103万円の壁です。超えると次のような影響が出てきます。

所得税がかかる

 給与収入は103万円まで控除(基礎控除48万円、給与所得控除55万円)が適用されます。そのため103万円以内であれば、課税できる所得がなく所得税が発生しないということになります。

 仮に働きすぎて超えてしまった場合、超えた部分にのみ所得税が発生します。例えば、113万円の給与所得がある場合は、超えた10万円×所得税率5%=5000円の負担になります。所得税は累進課税のため195万円までは税率5%のままです。給与所得が増えた割合に対して、所得税は微々たる負担のため影響度は高くありません。

扶養控除が受けられなくなる

 103万円の壁で一番影響が出るのは学生です。子どもの扶養控除は16歳以上38万円、19歳以上23歳未満63万円の控除を受けることができ、所帯の税負担軽減になっています。
 例えば、扶養する人の所得税が10%の場合、高校生の子どもは3.8万円、大学生の子どもは6.3万円減税されていることになります。そのため扶養控除から外れると、扶養する人の税負担が増え、所帯の手取りが減ることになります。
 年収の壁を意識して、年末になるとバイトの出勤日数を調整する学生も多いと思います。働き控えは労働力が不足している日本では死活問題ですね。

配偶者控除は150万円を超えると段階的に減る

 収入が150万円を超えると配偶者特別控除が減少します。納税者に養ってもらっている配偶者は38万円控除を受けることができます(年収制限など要件あり)。そして、150万円を超えると段階的に控除額が減額され、201万円を超えると特別控除から外れます。

 昔からのイメージで主婦(夫)は103万円を超えたらダメという認識がありましたが、18年以降は150万円まで配偶者特別控除が満額適用されるように制度変更されたため、超えた場合でも税法上の影響はありません。ただ、配偶者手当の支給基準が103万円となっている企業もあるようで、心理的な足かせになっているかもしれません。

社会保険料の壁

社会保険料に加入する

 社会保険に加入する基準は年間収入106万円を超えると条件付きで、130万円を超えると加入義務が発生します。つまり、扶養する方の社会保険から外れ、自分で社会保険に加入することになり、健康保険料と厚生年金保険料を支払う必要があります。保険料は、給与から天引きされるので、手取り収入が減少します。

 社会保険料は毎年4月~6月の平均賃金の標準月額報酬で計算します。例えば、40歳以上で月額11万円稼いでいる方は、月1.6万円、年間19万の社会保険料を支払う計算になります。

 社会保険に加入することで、働く人たちは、より安定した生活を送ることができるようになります。しかし、同時に、保険料負担の増加によって、手取り収入が減少する可能性もあります。収入増加を目指して働きたいと思っても、社会保険料の負担増加によって、働くことをためらってしまうケースも出てきます。結果的に、働くことがを抑制される本当の原因は社会保険料の壁ではないかとされています。 

「国民の手取りを増やす」

 今回の衆議院選挙で躍進した国民民主党の政策が103万円の壁撤廃です。「国民の手取りを増やす」として基礎控除等を178万円に引き上げる公約を掲げ、議席数が4倍になりました。

 基礎控除額は1995年からデフレ経済下の過去30年間103万円に据え置かれています。反面、最低賃金は全国加重平均で1995年611円から2024年に1055円とおよそ1.73倍になっており、最低賃金の上昇率1.73倍に引き上げるべきとします。基礎控除等の見直しにより年収に応じて減税され、全国民万遍なく恩恵を受けることができます。減税により消費が換気され企業収益が向上し、更なる賃上げに繋がるとされています。

 一方で、基礎控除引き上げに伴い行政サービスの低下も懸念されます。総務省の試算では基礎控除を引き上げた場合、年間7.6兆円の税収減になるとされています。その内、地方自治体の税収減が約4兆円とされており、特に人口が多い大都市は影響があるとされています。例えば、私の住んでいる福岡県では、県内の市区町村と県を合わせて最大1,577億円の減収が見込まれています。
 その影響で行政サービスの低下が懸念されています。例えば、子育て支援策の減少、コミュニティバスの減便、行政の出張所閉鎖や職員減による待ち時間の増加などがあげられます。

 所得が増え、消費が増えることで増収も見込まれますが、減収分を全て埋められるのかは不透明です。国からの支援も含め代替財源の確保も必要になると思われます。

選挙で意思表示をしていこう!

 国民民主党が掲げている「103万円の壁」撤廃つまり基礎控除の見直しの恩恵を受ける人は大勢いると思います。給与所得の中央値は約400万円ですので、玉木代表の試算上では年間12万円近く減税されるからです。非常にありがたい政策ですね。
 基礎控除の見直しが起こったのは衆議院選挙で国民民主党が躍進した結果です。若年層から政策が支持され、国民民主党の議席が4倍になりました。そのため、過半数を維持できなかった自公は法案を通すことができず、国民民主党との連携を模索することに繋がりました。
 そもそも1995年から一度も基礎控除の見直しがされていないことも、冷静に考えるとおかしい話です。消費を活性化させるのであれば減税が一番有効な策にも関わらず、議論にも上がらなかった。自公が過半数を維持した状態であれば、実現できなかったですし、国民の一票が生活を変えていくという実体験ができたことは非常に良かったと思います。
 この記事を書いている2024年11月時点では政策協議が始まったばかりで具体的な議論はこれからです。国民民主党の要望通り基礎控除が満額改正されるのか、折衷案で微々たる改定に留まるのか注意が必要です。2025年は参議院選挙がありますので、各党および国会議員の方々が国民のための仕事をしているのか我々も関心を持つ必要があります。そして、選挙によって民意を示すということを、引き続き実践していかなくといけません。

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